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卸売を知っていこう!シリーズ第2章

第1節  卸売業界の仕組み

「卸売業界の構造と流通経路を理解する」

卸売業界は、メーカーと小売業者をつなぐ重要な役割を果たしています。商品の集約、在庫管理、物流の効率化など、多様な機能を担い、経済の基盤を支えています。近年ではデジタル技術の進展により、流通経路は大きく変化しています。従来の長い流通経路から、より直接的で効率的なモデルへと移行が進んでいます。
今回は、卸売業界の構造と流通経路について解説し、現代の卸売業が直面している課題や展望に迫ります。

目次

  • 主要な流通経路とその特徴
  • 卸売業界におけるデジタル化の影響
  • これからの卸売業界の展望と戦略

主要な流通経路とその特徴

「従来型の長い流通経路」

従来型の流通経路は、「メーカー → 一次卸 → 二次卸 → 小売」という長い経路を特徴としています。この方式では、各段階で在庫管理や配送の役割が分担され、リスクが分散されるメリットがあります。一方で、多段階を経るため、最終的な小売価格が高くなりやすいというデメリットもあります。
従来型の長い流通経路は、「メーカー → 元卸 → 中間卸 → 最終卸 → 小売 → 消費者」という多段階の流れを特徴としています。各段階の卸売業者が特定の機能を担当し、商品の集約や分散、在庫管理、地理的な分配を行います。例えば、元卸は大都市で品揃え機能を、中間卸は地方中核都市で中継機能を、最終卸は各県中心都市で小売店への分散機能を担います。この構造により、リスクが分散され、専門性が活かされますが、各段階でコストが発生するため、最終的な小売価格が高くなる傾向があります。

「中間流通の短縮化

近年増加している「メーカー → 卸 → 小売」という経路は、中間流通の短縮化を図ったものです。この方式では、以下の特徴とともに課題が生じます。

主な特徴:

  1. 流通コストの削減:中間業者の数が減ることで、各段階でのマージンが削減されます。
  2. 情報伝達の迅速化:メーカーと小売業者の距離が近くなり、市場ニーズや商品情報の共有がスムーズになります。
  3. 在庫管理の効率化:流通段階が少なくなることで、全体的な在庫量を抑えられる可能性があります。

一方で、卸売業者には以下の課題が生じます:

  • より効率的な在庫管理システムの構築が必要
  • 物流の最適化への取り組みが求められる
  • 付加価値サービスの提供による差別化が重要

この流通経路は、特に中規模の小売チェーンや専門店で採用されることが多く、業界全体の効率化に貢献しています。

「直接取引の増加」

「メーカー → 小売」という直接取引も増加傾向にあります。これは特に大手小売チェーンやEコマース企業で見られる傾向で、中間マージンの削減や、消費者ニーズへの迅速な対応が可能になります。ただし、小売側の在庫リスクが高まるというデメリットもあります。詳細な内容は以下の通りです。

主な特徴:

  1. コスト削減:中間マージンが省かれるため、理論上は最も低コストでの取引が可能です。
  2. 迅速な情報交換:消費者ニーズや市場動向について、メーカーと小売業者が直接コミュニケーションを取れます。
  3. 在庫管理の最適化:需要予測の精度が向上し、過剰在庫や欠品のリスクが軽減されます。

課題:

  • 小売業者側の在庫リスクが増大
  • メーカーには物流機能の強化が求められる
  • 大手小売チェーンやEコマース企業が有利になる傾向がある

卸売業界におけるデジタル化の影響

「Eコマースの台頭」

B2B(企業間取引)におけるEコマースの成長は著しく、従来の卸売業のビジネスモデルを変えつつあります。オンラインプラットフォームを通じて、より多くの小売業者や飲食店が直接メーカーや卸売業者から商品を仕入れられるようになりました。

特に注目すべき点は以下の通りです:

  1. ドロップシッピングの普及:ネット通販業者が注文を受け、卸の倉庫から消費者に直接配送する方式が増加しています。
  2. 卸売ECの台頭:卸売業者が小売業者向けに商品を販売するBtoB ECが発展しています。これにより、取引の効率化や大量注文、一括注文などが可能になっています。
  3. オムニチャネル化の進展:実店舗、SNS、ECサイトなど、あらゆる販売チャネルで顧客とつながる戦略が重要になっています。
  4. 大手ECプラットフォームの影響:Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの大手ECモールの存在感が増しており、卸売業者もこれらのプラットフォームとの連携を強化しています。

これらの変化により、卸売業者は従来の役割に加え、デジタル技術を活用した新たなサービスの提供や、より効率的な在庫管理・物流システムの構築が求められています

デジタル技術を活用した在庫管理と物流の効率化

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の活用により、在庫管理や需要予測の精度が飛躍的に向上しています。例えば、RFIDタグを使用した在庫管理システムにより、リアルタイムでの在庫状況把握が可能になり、過剰在庫や欠品のリスクが軽減されています。下記に特徴と各効果を記載します。

主な特徴と効果:

  1. WMS(倉庫管理システム)の導入:入出庫やピッキング、棚卸しなどの倉庫業務を効率化し、リアルタイムでの在庫情報管理を実現します。
  2. IoTとAIの活用:IoTセンサーによるリアルタイムの在庫監視とAIによる需要予測を組み合わせ、最適な在庫管理と配送計画が可能になります。
  3. 自動化システムの導入:ロボティクスを活用した自動ピッキングや自動仕分けにより、作業効率が向上し、人的ミスが減少します。
  4. クラウド型在庫管理システム:複数拠点の在庫を一元管理し、リアルタイムでの在庫状況把握が可能になります。
  5. RFIDタグの活用:商品の入出荷や移動を正確に追跡し、在庫の可視化を徹底できます。

これらの技術導入により、業務効率の向上、人的ミスの削減、リアルタイムの在庫管理が実現し、卸売業界の競争力強化につながっています

「オンライン卸売プラットフォームの登場と普及」

Alibaba.comやAmazon Businessなどのオンライン卸売プラットフォームの登場により、中小の卸売業者や小売業者でも、より広範囲の取引先にアクセスできるようになりました。これにより、業界の競争環境が大きく変化しています。

主な特徴:

  1. 新たな取引形態:従来の「メーカー → 卸 → 小売」という流通構造に加え、オンラインプラットフォームを介した直接取引が増加しています。
  2. グローバル展開:Faireのような国際的なプラットフォームにより、世界規模での卸売取引が可能になっています。
  3. 小規模事業者の参入障壁低下:支払い方法の柔軟性(例:NET60)により、小規模小売店も参加しやすくなっています。
  4. 効率的な商品探索:検索機能やフィルター機能により、小売店は自店に合う商品を容易に見つけられます。
  5. コスト削減:海外出張なしで仕入れが可能になり、時間的・金銭的コストが削減されています。
  6. 付加価値サービス:輸入手続きの代行や物流サポートなど、取引以外のサービスも提供されています。

これらの特徴により、オンライン卸売プラットフォームは卸売業界に新たな可能性をもたらし、業界構造を変革しつつあります。

これからの卸売業界の展望と戦略

「付加価値サービスの提供による差別化」

単なる商品の仲介だけでなく、マーケティング支援や在庫管理サービス、金融サービスなどの付加価値サービスを提供することで、競争力を高める卸売業者が増えています。例えば、小売店舗のレイアウト提案や販売員教育など、総合的なサポートを行うことで差別化を図っています。

主な特徴:

  1. 問題解決型営業:小売業の困りごとを解決することが卸売業の重要な機能となっています。
  2. 商材の拡充:従来の食品に加えて非食品、特に日用品の領域にも踏み込み、取引の窓口を広げています。
  3. デジタル化支援:小売業のDXを支援するため、商品マスタやEDIシステムの共通化を進めています。
  4. 情報提供サービス:メーカーと実店舗小売業のデジタルサービスを「情報卸」としてつなぐサービスを提供しています。
  5. データ分析・マーケティング支援:小売業者向けにデータ分析やデジタルマーケティングのサポートを行っています。

これらの付加価値サービスにより、卸売業者は単なる商品の仲介者ではなく、ビジネスパートナーとしての地位を確立し、競争力を高めています。

「専門性と情報提供能力の強化」

商品知識や市場動向に関する深い洞察を提供することで、卸売業者の存在価値を高める動きが見られます。例えば、特定の業界に特化した専門卸が、その分野での豊富な知識と情報網を活かして、小売業者やメーカーにとって不可欠なパートナーとなっています。

主な特徴:

  1. 専門知識の深化:特定の商品や業界に関する深い知識を持つことで、付加価値の高いサービスを提供できます。
  2. データ分析能力の向上:市場動向や消費者行動のデータを分析し、小売業者に有益な情報を提供することが求められます。
  3. デジタル技術の活用:IoT、AI、ビッグデータなどのデジタル技術を活用し、より精度の高い情報提供が可能になります。
  4. 継続的な学習:急速に変化する市場環境に対応するため、常に新しい知識やスキルを習得する必要があります。
  5. 情報提供の多様化:従来の商品情報だけでなく、マーケティング戦略や在庫管理など、幅広い分野での情報提供が求められます。

「持続可能性と環境配慮型ビジネスモデルへの移行」

環境問題への意識の高まりを受け、サステナビリティを重視したビジネスモデルへの移行が進んでいます。例えば、環境に配慮した包装材の使用や、再生可能エネルギーを活用した物流センターの運営など、様々な取り組みが行われています。また、フードロス削減のための需要予測システムの導入なども、重要な戦略となっています。

主な特徴:

  1. SDGsへの取り組み強化:卸売業者は、持続可能な社会の実現に向けて、SDGsの目標達成に貢献する取り組みを積極的に行っています。
  2. 無駄の削減:物流の最適化や情報共有システムの活用により、必要な商品を必要な量だけ効率的に届けることで、フードロスなどの問題解決に貢献しています。
  3. グリーン購入・調達の推進:環境負荷の少ない商品や原材料を選択し、サプライチェーン全体での環境配慮を促進しています。
  4. クリーンエネルギーの導入:再生可能エネルギーの利用や省エネ設備の導入により、事業活動における環境負荷の低減を図っています。
  5. カーボンニュートラルへの対応:グリーントランスフォーメーション(GX)の推進により、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。

これらの取り組みにより、卸売業界は社会的責任を果たすとともに、新たなビジネスチャンスの創出や企業価値の向上を目指しています。

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