第17回 国際物流総合展 2026(LTT2026)出展社シリーズ 第2回
医薬品や食品を輸入するとき、温度は品質そのものです。日本の医薬品流通ではGDP(Good Distribution Practice)の考え方が広がり、食品ではHACCPに沿った衛生管理が制度化されています。いずれも共通して求められるのが、「適切な温度で運んだ」ことを記録で示せるかという点です。
LTT2026でコールドチェーン・温度管理に該当した出展は10件。数は多くありませんが、担っている層がはっきり三つに分かれていました。
三つの層
| 層 | 何を売っているか | 件数 |
|---|---|---|
| ① 冷やす設備 | 倉庫・施設に据え付ける冷凍機 | 2 |
| ② 冷たさを保つ容器 | 電源を使わずに温度を維持する箱 | 3 |
| ③ 記録する機器 | 温度を測り、記録を残す | 5 |
設備・資材・計測。この三層は買い手も導入判断も別で、同じ「コールドチェーン」という言葉で括られていても検討の場面が違います。順に見ていきます。
① 冷やす設備 — 自然冷媒への転換
この層の2件は、いずれもCO₂を冷媒とする冷凍システムを出展しています。共通点は偶然ではなく、フロン類の規制強化を受けた業界全体の流れを反映したものです。
フクシマガリレイ(E3-K05)
CO₂冷凍システム「NOBRAC」とプレハブ冷凍冷蔵庫を出展。公表内容によれば、CO₂冷凍機とフリーザーを統合制御することで最大20%の省エネを実現するとしています(同社試験機での比較)。負荷変動に応じた冷却追従性や膨張弁制御の最適化を挙げています。
もう一つの訴求点が冷媒漏れリスクの低減です。部品を共通化して本体構造を単純にし、配管部品点数を削減、低振動設計とすることで漏れのリスクを下げると説明しています。対象は物流施設・配送センター・食品工場としています。
井戸冷機工業(W4-M39)
低温物流倉庫向けのCO₂冷媒冷凍機「イータマックス冷凍システム」を出展。完全空冷式である点と、対応温度帯を等級で示しているのが特徴です。主催者公表資料によれば、次の三等級に対応するとしています。
- SF1級(−45℃)
- F級(−35℃〜−20℃)
- C級(0℃〜10℃)
中山エンジニアリングとの共同出展です。なお同社公式サイトでは異なる温度範囲が案内されている箇所があります。導入を検討される場合は、必要な温度帯について直接ご確認ください。低温帯まで対応する機種は、扱う品目によって選択肢が限られる領域です。
② 冷たさを保つ容器 — 共通するのは「電源を使わない」
この層の3件は、いずれも電源に依存しない定温輸送を訴求しています。輸入実務の観点からは、リーファーコンテナや保冷トラックを前提としない選択肢が増えることを意味します。
アバンタス(W1-N03)
脱炭素型保冷ボックス「アバンキューブ」を出展。保持時間について次の数値が公表されています。
- 国内輸送:電気・保冷剤なしで最大24時間
- 海外輸送:電気を使わず保冷剤のみで最大30日間の海上輸送に対応
ただし公表されているのは時間であり、維持される温度帯や、前提となる外気温・初期温度・積載率といった条件は示されていません。定温輸送の検討では「何℃を何時間」が揃って初めて比較できるため、実際の適合可否は個別に確認が必要です。
同社は保冷トラックやリーファーコンテナへの依存を減らし、物流コストとCO₂排出の削減を目指すとしています。振動吸収装置やデータロガーを組み合わせた輸送解析も併せて提供。対象分野として食品・医薬品に加え、半導体、化学品、商社などを挙げています。サイズ・仕様のカスタマイズにも対応するとしています。
「30日間の海上輸送を電源なしで」という条件は、輸送手段の選び方そのものに関わります。航空輸送を前提にしていた品目が海上に移せるかどうかは、コスト構造が変わる論点です。
多田プラスチック工業(E2-B01)
段ボール保冷ボックス、パレットキューブ、真空断熱材封入パネルなどを出展。代表製品「TPクールライト」について、外装をプラダン(プラスチック段ボール)とし、繰り返し使用に特化した製品と説明しています。
公表されている仕様で目を引くのは50Lオリコンと同サイズという点と、約1.8kgという重量です。既存の物流機器の寸法体系に合わせてあるため、既に動いているラインに差し込みやすい設計といえます。想定用途として医薬品配送・冷凍食品・航空便・海運のほか、ドライアイス削減という文脈も挙げられています。
キラックス(E2-H02)
最新の冷蔵・冷凍機を搭載した「COOL-K」をはじめとする定温物流機器(保冷・保温)を出展。サイズや仕様を希望に合わせて最小ロットから作成できる点と、修理・修繕サービスを併せて案内しているのが特徴です。
保冷容器は品目ごとに求められる温度帯と形状が異なるため、既製品で合わない場面が出ます。小ロットから作れることと、壊れたときに直せることは、運用を続ける側にとって実務的な条件です。
③ 記録する機器 — 5件が同じ領域に
10件のうち半数が温度記録の領域です。ここが最も出展が厚い層でした。「冷やす」より「冷やせていたことを示す」ほうに比重が移っていることが読み取れます。
Gocochain(W3-D18)
リアルタイム温度監視ソリューション。CoTag Connectセンサーが5分ごとに温度を記録し、SIM内蔵ゲートウェイ(4G・Wi-Fi・有線LAN対応)経由で自動送信するため、現場にネットワーク設備がなくても導入できるとしています。
データはクラウドに集約され、永久保存・校正レポート・監査対応記録を備えると説明。飲食・セントラルキッチン・定温倉庫・物流・医薬品を対象とし、HACCP・GHP・GDP要件への対応を明示的に掲げています。
Willog(AT-A01)
IoTセンサーとAI分析による物流モニタリング。測定対象を温度に限定せず、位置・温湿度・衝撃・傾き・照度をリアルタイムで確認できるとしています。
構成は「Willog Safe」(センサーデバイス)、「Willog Control Tower」(クラウド管理プラットフォーム)、「Willog Intelligence」(AI分析エンジン)の三層。コールドチェーンや医薬品に加え、精密機器・電子部品を対象に挙げています。
エム・アールエフ(E2-D06)
「温度管理とトレーサビリティの二刀流」を掲げ、RFIDと温度管理を組み合わせた出展。米Axzon社の使い切りタイプRFID温度ロガータグを紹介しています。
公表されている特徴は、使い切りのため校正費が不要であること、マンガン系プリントバッテリー採用により航空輸送が可能であること、輸送先からの回収が不要であること、離れた場所から一括読み取りができることです。
温度ロガーは従来、回収と校正が運用上の負担でした。使い切りという選択肢は、その負担を前提から外す設計といえます。併せて、小規模から始められる温度管理パッケージ「サモトレ」も案内しています。
ティアンドデイ(E1-D17)
輸送中および倉庫の温度管理システム「おんどとり」を出展。日本国内で広く使われている記録計のシリーズです。
藤田電機製作所(W4-M03)
衝撃Bluetoothデータロガーとゲートウェイを組み合わせた実演を実施。輸送中の衝撃データをBluetoothで収集し、ゲートウェイ経由でクラウドへ自動送信する構成です。
「いつ・どこで・どの程度の衝撃が発生したのか」を把握することで、輸送事故の原因分析や再発防止に用いるという位置づけです。温度ではなく衝撃を主軸に置いている点で、この層のなかでは性格が異なります。
輸入する側から見ると
10件の内訳を並べると、この分野で何が課題になっているかが見えてきます。
- 設備は自然冷媒へ——冷凍機2件がともにCO₂。フロン規制を背景とした転換期にあります
- 容器は無電源へ——3件すべてが電源に依存しない定温輸送を訴求。輸送手段の選択肢が広がる方向です
- 記録が半数——10件中5件。温度を保つことと同じ重さで、保てていた証跡が求められています
医薬品や食品を輸入する立場では、三つ目が実務に直結します。輸送品質は結果として品質が保たれたかだけでなく、保たれていたことを後から示せるかで問われます。取引先や規制当局に対して記録で説明できる体制になっているかは、輸送手段を決める段階で確認しておくべき項目です。
本稿は主催者が公表した出展内容および各社公式サイトの公開情報に基づいています。製品の優劣比較や評価は行っていません。仕様は2026年8月時点の公表内容であり、最新情報は各社にご確認ください。