日本市場への参入を検討する海外メーカーが、ある段階で必ず突き当たる制度上の壁があります。海外法人は、日本の医薬品製造販売業許可を自ら取得することができません。商品力の問題でも、資本の問題でもなく、制度の設計としてそうなっています。
なぜ取得できないのか
製造販売業者は、日本で流通した製品について回収・報告・安全対策の責任を負います。健康被害が生じたとき、規制当局が直ちに指示を出せる相手でなければなりません。国外にしか拠点を持たない法人は、この責任を果たせる体制にないと判断されます。
つまりこれは参入障壁として設けられた制度ではなく、責任の所在を日本国内に固定するための制度です。そう理解すると、次に説明する仕組みの意味が分かりやすくなります。
選任製造販売業者(DMAH)という仕組み
薬機法は、海外メーカーが日本で承認を受ける道を閉ざしてはいません。外国特例承認という制度があり、海外メーカー自身が承認取得者になることができます。ただし条件があります。
承認を申請する前に、日本国内ですでに製造販売業許可を持つ事業者の中から、責任を担う一社を選任しなければなりません。これを選任製造販売業者(DMAH:Designated Marketing Authorization Holder)といいます。
- 海外メーカーが、日本の製造販売業許可保有者の中から選任製造販売業者を選ぶ
- 海外メーカーが厚生労働省に承認申請を行う
- 審査を経て、海外メーカーに外国特例承認が与えられる
- 選任製造販売業者が、日本国内での製造販売業者として製品を流通させる
承認は海外メーカーが持ち、日本国内の責任は選任した会社が負う。この分離が制度の要点です。
製造所の側にも認定が要る
もう一つ、見落とされやすい要件があります。日本へ輸出される医薬品・医薬部外品を製造する海外の製造所は、医薬品等外国製造業者の認定(薬機法第13条の3)を受けている必要があります。
この認定は、製造販売承認を受けるための前提条件です。製造所が認定されていなければ、承認そのものが取れません。
「まず販路を決めてから、製造所の書類を整えればよい」という順序で進めると、ここで止まります。製造所の体制が要件を満たしているかは、商談と並行して——できればそれより前に——確認しておくべき項目です。
選任する相手をどう選ぶか
選任製造販売業者は、書類上の名義人ではありません。日本国内で実際に責任を負う立場です。そのため、引き受ける側も相応の審査を行います。海外メーカーの側から見ると、次の点が実務上の判断材料になります。
- その会社の製造販売業許可が、第一種か第二種か(扱える医薬品の範囲が異なります)
- 安全管理・品質管理の体制(GVP・GQP)が、対象製品に対応できるか
- 回収が必要になった場合の実務を、実際に動かせるか
- 流通そのものを誰が担うのか——選任製造販売業者が卸売の機能まで持つとは限りません
最後の点が、海外メーカーにとって想定外の負担になりやすい箇所です。責任を負う会社と、実際に薬局・医療機関へ納める会社が別になれば、契約も物流も二本立てになります。
制度を前提に、順序を組み直す
日本参入の検討は、しばしば「どこに売るか」から始まります。しかし医薬品の場合、売り先より先に、責任体制が決まっていなければ一歩も進みません。
- 製品が日本で医薬品に該当するかを確定させる
- 該当するなら、承認のルート(新医薬品・後発医薬品・一般用医薬品)を見極める
- 選任製造販売業者の候補を探し、引き受け可能かを打診する
- 製造所の外国製造業者認定の状況を確認する
- 流通を担う販売業者を確保する
この順序であれば、途中で前提が崩れても手戻りは小さく済みます。逆順で進めた場合、最後の段階で計画全体が組み直しになります。
当社は医薬品卸売販売業許可を保有し、日本国内での流通を担うことができます。製品区分の判定、必要となる許可の組み合わせ、体制の組み立てについてご相談を承っています。