日本の取引先から「医薬品の許可を持っています」と言われたとき、それがどの許可を指しているのか。日本の薬機法では、同じ「医薬品の許可」という言葉で目的のまったく違う二つの制度が呼ばれています。この二つを取り違えたまま話が進み、契約直前で前提が崩れる——という事態は珍しくありません。
「市場に出す責任」と「流通させる資格」
製造販売業許可(薬機法第12条)は、その医薬品を日本市場に出す責任を負う立場の許可です。品質・有効性・安全性について最終的な責任を持ち、不具合が起きれば回収を判断します。製品ごとの承認申請を行う主体にもなります。日本語の「製造販売」という語感から製造工場の許可と誤解されがちですが、自社工場を持つ必要はありません。担うのは製造ではなく責任です。
販売業許可(薬機法第24条)は、出来上がった医薬品を流通させるための許可です。市場に出す責任ではなく、売り渡す行為そのものを対象にしています。
両者は別個の許可です。片方を持っていても、もう片方の行為を行うことはできません。
販売業は、さらに三つに分かれる
薬機法第25条は、医薬品の販売業を三種類に区分しています。どれを持っているかで、売れる相手が変わります。
| 種類 | 主な販売先 |
|---|---|
| 店舗販売業 | 一般の消費者(要指導医薬品・一般用医薬品) |
| 配置販売業 | 家庭等に医薬品を預け、使用分を後から精算 |
| 卸売販売業 | 薬局、病院・診療所、製造販売業者、他の販売業者など |
実務でよく誤解されるのが、卸売販売業は一般消費者に販売できないという点です。販売先は施行規則第138条で定められており、事業者と医療機関に限られます。ECで一般消費者に売る事業と、薬局・病院に納める事業は、同じ「医薬品を売る」でも許可が別なのです。
逆方向も成り立ちます。店舗販売業の許可だけでは、薬局や病院への卸売はできません。
取扱品目の範囲も、許可ごとに違う
許可証には取扱品目が明記されます。ここが見落とされやすいところです。
- 医療用医薬品(医師の処方箋に基づいて使われるもの)
- 要指導医薬品(薬剤師の対面での情報提供が必要なもの)
- 一般用医薬品(いわゆるOTC、第1類〜第3類)
「医薬品の許可がある」という説明を受けても、その許可が一般用医薬品に限られているのか、医療用医薬品まで含むのかで、扱える商品はまったく変わります。医療機関向けの製品を想定しているなら、ここを確認しないまま進めることはできません。
海外企業にとって、何が問題になるか
海外の医薬品を日本で流通させる場合、必要になるのは通常この両方です。市場に出す責任を負う者(製造販売業)と、流通させる者(販売業)。そしてこの二つを同じ会社が持っているとは限りません。
製造販売業許可を持つ会社は、多くが製薬企業です。流通網は持っていても、海外の新規ブランドを自社責任で市場に出すことには慎重になります。一方、卸売の実務を持つ会社が製造販売業許可まで備えているケースは多くありません。結果として、日本側で二社を確保する必要が生じます。
さらに、海外法人は製造販売業許可を自ら取得することができません。この点については別稿で扱います。
最初に確認すべきこと
- その製品が日本で医薬品に該当するか(該当しなければ別の制度になります)
- 該当する場合、誰が製造販売業者になるのか
- 流通を担う相手の許可がどの販売業か、取扱品目は何か
- 想定している販売先(消費者・薬局・医療機関)が、その許可の範囲に入っているか
この四点は、価格や数量の話に入る前に固めておくべき前提です。順序を逆にすると、条件を詰めた後で「その売り方はできない」と判明することになります。
当社は医薬品卸売販売業許可(大阪府知事 第B14657号/取扱品目:全ての医療用医薬品、要指導医薬品及び一般用医薬品)を保有しています。製品の区分判定や、必要となる許可の組み合わせについてのご相談を承っています。