日本の販売パートナーが決まり、条件の詰めに入る。この段階で話題になるのは通常、価格・最低数量・独占の範囲です。ただし規制対象の商材では、それより先に決めておかないと後で動かせなくなる項目がいくつかあります。

1. 相手の許可の範囲と、想定する販売先が一致しているか

医薬品の販売業許可は、種類によって売れる相手が決まっています。卸売販売業は薬局・医療機関・事業者向け、店舗販売業は一般消費者向けです。

「まず薬局に入れて、反応を見てからECにも広げる」という計画は自然に見えますが、この二つは同じ許可ではカバーできません。将来の展開まで含めて、相手の許可がどこまで届くのかを確認しておく必要があります。

医療機器であれば、クラスⅢ・Ⅳを含むかどうかで必要な許可が変わります。ラインナップの一部だけが高度管理医療機器に該当する、という状況は珍しくありません。

2. 誰が市場に出す責任を負うのか

流通を担う事業者と、製造販売業者(市場に出す責任者)は別の役割です。同じ会社が両方を担う場合もあれば、二社に分かれる場合もあります。

契約書に「日本での販売を委託する」とだけ書かれていると、この区別が曖昧なまま残ります。承認・認証・届出の名義を誰が持つのかは、契約が終了したときに製品を日本市場に残せるかどうかを左右します。名義が相手にあれば、取引解消は市場からの撤退を意味します。

3. 回収が必要になったとき、誰が何をするか

考えたくない事態ですが、規制対象の商材を扱う以上、起きる前に決めておくべき項目です。

  • 回収を判断するのは誰か
  • 行政への報告を行うのは誰か
  • 回収の実務(在庫の引き上げ、告知、廃棄)を担うのは誰か
  • 費用をどう分担するか

法令上の責任は製造販売業者にあります。ただし実務を誰が動かし、費用を誰が負担するかは当事者間の取り決めです。ここが白紙のまま事態が起きると、対応そのものが遅れます。

4. 表示物の最終確認を誰が行うか

日本語のラベル、パッケージ、商品ページ、広告——これらは区分ごとに書ける内容が法令で決まっています。化粧品で医薬部外品の表現を使えば違反になり、食品で医薬品的な効能をうたえば区分そのものが変わります。

制作を海外側で行い、日本側が確認する体制であれば問題ありません。しかし確認の責任が明記されていないと、双方が「相手が見ているはずだ」と考える状態が生まれます。

表示の責任は、契約書に一行あるかないかで所在が変わります。

5. 在庫と、独占の解除条件

独占販売権を与える場合、解除の条件を数値で決めておくことが実務上重要になります。「努力する」「協力する」といった文言は、後から判断の基準になりません。

  • 期間内の最低購入数量——達しなかった場合にどうなるか
  • 独占の範囲——地域か、チャネルか、製品ラインか
  • 在庫を相手が保有する場合、契約終了時の扱い(買い戻すのか、販売を認めるのか、期限を切るのか)
  • 賞味期限・使用期限のある商材では、期限切れ在庫の負担

特に最後の点は、食品や化粧品で実際の争点になりやすい箇所です。

順序を逆にしない

これらは価格交渉より前に確認しておく項目です。理由は単純で、1と2が成立しなければ、価格をいくらに決めても取引が成立しないからです。

条件を詰めた後に「その販売先はその許可では対応できない」と判明した場合、やり直すのは価格ではなく体制そのものになります。最初の打ち合わせで許可証の写しを交換しておけば、避けられる手戻りです。

当社は医薬品卸売販売業許可・高度管理医療機器等販売業許可・医薬品店舗販売業許可を保有し、流通と販路の両方を自社で担っています。独占販売権や正規代理店契約の条件整理からのご相談も承っています。