化粧品を輸入して日本で売るとき、容器に書く成分名の一覧は海外の成分表を訳したものでは通りません。訳語だけの問題ではなく、どの名前で書くか・どの順に書くか・何を書かないかが告示と通知で決まっているからです。
ここでつまずくと、刷り上がったラベルを捨てることになります。先に形を知れば避けられる損失なので、条文に沿って整理します。
「全成分表示」はどの条文から来ているか
化粧品の容器への記載事項は薬機法 第61条が定めています。成分については、第4号にこう書かれているだけです。
厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品にあつては、その成分の名称
条文そのものは「全成分」と言っていません。大臣が指定した成分を書けばよい構造です。その指定が平成12年9月 厚生省告示第332号で、化粧品については原則として配合するすべての成分が指定されました。これが全成分表示の根拠です。
それ以前は、皮膚障害を避けるための情報として102種類の指定成分だけが対象でした(医薬発第990号)。種別ごとの承認制を廃止する代わりに全成分を開示する、という取引で今の形になっています。前回ふれた化粧品基準(告示第331号)と同じ日の、同じ規制緩和の一部です。
医薬部外品は今も指定成分だけです。「薬用」と書かれた製品は医薬部外品なので、全成分表示の義務はありません。自主的に全成分が載っていることはありますが、義務の有無は別です。同じ棚の二つの製品で、確認すべきことが入れ替わります。
なお、第4号による記載を省略しようとする成分は非開示成分として指定されており、これを配合する化粧品は品目ごとに大臣の承認が必要です。公知の成分を非開示にすることは認められないため、全成分を開示する前提で処方を選ぶほうが現実的です。
書く順番には三つの例外がある
順番は通知(医薬審発第163号・医薬監麻発第220号、平成13年3月6日)が定めています。原則は製品における分量の多い順。例外が三つあります。
- 1%以下の成分 — 互いに順不同で差し支えない
- 着色剤 — 互いに順不同で差し支えない
- 着香剤として使う香料 — 個々の成分名ではなく「香料」とまとめて差し支えない
実務で効くのは一つめです。1%を超える成分は多い順ですが、1%以下の帯に入った時点で順番は情報を持ちません。しかも帯の境目は外から見えません。表示だけを根拠に配合量を推し量ることはできない、という前提で成分表を読む必要があります。
書かないもの、分けて書くもの
同じ通知が、表示しなくてよいものを定めています。
配合されている成分に付随する成分(不純物を含む。)で製品中にはその効果が発揮されるより少ない量しか含まれないもの(いわゆるキャリーオーバー成分)については、表示の必要はない。
逆に、ばらして書くものが二つあります。混合原料(プレミックス)は混合されている成分ごとに記載します。原料メーカーから買った状態の名前で一行書くのではなく、中身を展開します。
抽出物は、抽出された物質と抽出溶媒又は希釈溶媒を分けて記載します(最終製品に溶媒が残存しない場合を除く)。植物エキスの多い処方ではここで行数が増えるので、容器の面積は原料表の行数ではなく展開後の行数で見積もってください。
名前は訳語ではなく、決められた表示名称
通知は成分名を邦文名で記載するとし、日本化粧品工業連合会作成の「化粧品の成分表示名称リスト」等を利用して消費者の混乱を防ぐよう求めています。同会は2023年に日本化粧品工業会へ改組されました。
INCI名をカタカナに置き換えれば済むわけではなく、日本で使われている表示名称に当てる必要があります。韓国語や英語の表記と一対一で対応しないことも多く、突き合わせには時間がかかります。リストに名称がない成分については日本化粧品工業会が表示名称の作成業務を行っているので、新規原料を含む処方では名称を用意する時間も日程に入れます。
小さな容器には特例がある
行数が増えると小さな容器には入りません。施行規則 第221条の二が、第4号の事項(成分名)を直接の容器から省略できる場合を定めています。
- 外部の容器又は外部の被包に記載されているとき
- 直接の容器又は直接の被包に固着したタッグ又はディスプレイカードに記載されているとき
- 内容量が50g又は50mL以下の直接の容器等に収められた化粧品、及び前二号のいずれも有しない小容器の見本品にあつては、これに添付する文書
- 外箱等を有する化粧品のうち内容量が10g又は10mL以下の直接の容器等に収められたものにあつては、外箱等に添付する文書、又は直接の容器等に添付する文書及びディスプレイカード
添付文書は容器に固着していなくても構いませんが、購入時に製品とともに持ち帰ることができるものに限られ、ディスプレイカードは購入時に成分が確認できるように設置されているものに限られます(医薬発第990号)。
もう一つ、固着しない添付文書で全成分表示を行う場合には直接の容器及び被包に「添付する文書がある旨」を記載しなければなりません(医薬審発第163号)。サンプルやミニサイズを多く扱うなら、先に確認しておく箇所です。
確認の順番
ラベルで止まらないためには、次の順で見ると戻り作業が減ります。
- 区分の確認 — 化粧品か医薬部外品か(義務の範囲が変わります)
- プレミックスと抽出物を展開した状態で全成分を一覧にする
- 各成分に日本の表示名称があるか確認し、無いものは名称作成を手配する
- 1%を境に並べ替え、着色剤を末尾に、香料を「香料」にまとめる
- 内容量を確認し、特例を使うなら「添付文書がある旨」の記載を設計に入れる
前回の化粧品基準が処方を変えるかの判断だったのに対し、今回の論点はほとんどが印刷物の作り直しで吸収できる範囲です。ただし吸収できるのは、印刷の前に気づいた場合に限ります。
参考にした一次情報
- 薬機法 第61条、同施行規則 第221条の二(e-Gov 法令検索)
- 化粧品規制緩和に係る薬事法施行規則の一部改正等について(医薬発第990号、平成12年9月29日)/東京都公開
- 化粧品の全成分表示の表示方法等について(医薬審発第163号・医薬監麻発第220号、平成13年3月6日)/岡山県公開
- 薬事法第59条第6号及び第61条第4号の規定に基づき名称を記載しなければならないものとして厚生大臣の指定する医薬部外品及び化粧品の成分を定める件(厚生省告示第332号)
※ 本記事は制度の概要です。個別の可否は所管の薬務主管課の判断によります。
弊社は化粧品・医薬部外品の輸入と卸売を行い、処方と表示の両面から日本での取扱可否を確認しています。成分段階での可否判断からご相談を承ります。



