第17回 国際物流総合展 2026(LTT2026)出展社シリーズ 第5回
2025年6月1日、改正労働安全衛生規則が施行されました。職場の熱中症対策が、努力から義務に変わった日です。
ただし、義務の中身は設備ではありません。新設された安衛則第612条の2が事業者に求めているのは、次の二つです。
| 義務 | あらかじめ定めて、関係作業者に周知する |
|---|---|
| ① 報告体制の整備 | 自覚症状のある作業者、おそれのある作業者を見つけた者が報告するための連絡先・担当者 |
| ② 手順等の作成 | 作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察、緊急連絡網と搬送先 |
対象は、暑さ指数(WBGT)28度または気温31度以上の作業場で行われる作業のうち、継続して1時間以上、または1日あたり4時間を超えて行われることが見込まれるものです。
ここで倉庫の話になります。施行通達は、屋内作業場もこの「熱中症を生ずるおそれのある作業」に含まれると明示しました。屋根の下だから対象外、ということにはなりません。さらに、同一の作業場で複数の事業者が作業する場合は、元方事業者と関係請負人のいずれにも措置義務が生じるとされています。構内に協力会社が入る現場では、自社だけ整えても足りないという意味です。
先に線を引きます — 設備は義務を置き換えません
遮熱材を張っても、ファンを回しても、①②の義務は残ります。設備の有無が、①②を満たしたことにはなりません。順序は、体制と手順が先です。
そのうえで、同じ規則の第614条には、休憩設備を設ける場合に直射日光を遮る、冷房設備を設置する、ミストファンを使用する等により内部の温湿度を低下させる措置が望ましいとあります。設備が出てくるのはこちら側です。義務ではなく、望ましいとされている側です。
LTT2026の施設・環境関連の出展を通して読むと、訴求はこの望ましい側に集まっていました。そして興味深いことに、もっとも出展が多かったのは暑さと関係のない領域でした。
四つの層
| 層 | 何を変えるか |
|---|---|
| ① 熱を入れない | 屋根・外壁で止める |
| ② 空気を動かす | 溜まった熱と湿気を逃がす |
| ③ 足元を直す | 床の不具合そのものを直す |
| ④ 出るものを減らす | 廃材・粉じん・汚れを現場から減らす |
① 熱を入れない
屋根と外壁で輻射熱を反射・遮断する方向です。遮熱塗料と遮熱シートが出ていました。共通していた訴求は既存の屋根を葺き替えないこと、そして操業を止めにくい現場でも短工期で入れることです。屋根の表面温度が下がれば庫内温度の上昇が抑えられ、空調負荷も下がるという筋立てです。
防水・補修を兼ねると打ち出す例もありました。雨漏りする屋根と暑い屋根は同じ面なので、足場を組む機会を一度で済ませる発想です。
確認が要るのは、屋根の種類と面積、そして施工できる時間帯です。折板か、スレートか、金属外壁か。同じ遮熱でも工法が変わります。
② 空気を動かす
入ってきた熱と湿気を外に出す方向です。大型の天井ファン、金属ダクトに替わる布製のエアダクト、気化式の冷風機などが出ていました。
特徴的だったのは、同じ出展に冬用の暖房機器が並んでいたことです。夏だけの商材ではなく、年間の空調として売られているという意味です。結露・湿気対策が併記されるのも同じ理由でしょう。温度だけを見ればファンを回すのが正解ですが、保管品にとっては結露のほうが怖い場合があります。
確認が要るのは、天井の高さと梁の位置です。大きなファンは吊る場所がなければ入りません。
③ 足元を直す
出展がもっとも多かったのはここでした。暑さとは関係のない領域です。大きく三つに分かれていました。
床そのものを直す——沈下・傾き・段差・たわみを、コンクリートを壊さずに樹脂を注入して持ち上げる方向。訴求の中心は、ラックや機械を動かさなくてよいこと、そして操業を止めないことでした。
床の表面を替える——耐摩耗、防滑、無人搬送機の走行に向けた床材と床用塗料。低温環境でも施工できる補修材もありました。冷蔵・冷凍庫を止めずに、温度差の大きい出入口付近を直すという用途です。
工事をせずに足す——段差を越えるための可搬型スロープ、防滑テープ、ライン用のテープやフィルム。その日に置けて、必要なくなれば外せる側です。
床が水平でないと何が起きるかは、各社の訴求文にそのまま書かれていました。パレットを高く積めない、フォークリフトの爪がパレットに入らない、ラックが傾く、無人搬送機が正常に動かない、シャッターの下に隙間ができる。床は単独の問題ではなく、上に載っている運用すべての前提だという整理です。
確認が要るのは、その床を何が通るかです。人か、フォークリフトか、無人搬送機か。求められる平坦度が違います。
④ 出るものを減らす
現場から出るもの——空の段ボール、発泡スチロール、粉じん、汚れ——を減らす方向です。
圧縮・減容——段ボールや廃プラスチックを圧縮する機械。訴求は置き場の削減と、圧縮後は再生原料として扱えるという点に置かれていました。発泡スチロールを溶かして固め、プラスチック原料に戻す機械も出ていました。
清掃——自律走行する床洗浄機と搭乗式の清掃機。広い面積を少ない人数で、という方向です。
空気の側——工業用の空気清浄機、エアシャワー、靴底や車輪の異物を落とすマット。粉じんや臭気を対象にした機器が、作業環境の改善という同じ言葉の下で暑さ対策と並んでいました。
鳥の飛来・営巣への対策も複数ありました。倉庫は鳥にとって外敵が少なく温度も安定している——だから居着く、という説明です。衛生の話であり、暑さの話ではありません。
輸入する側から見ると
四つの層に共通していたのは、建物を建て直さないという設計思想です。屋根を覆う、ファンを吊る、床に注入する、廃材を圧縮する——どれも操業を止めない側に寄せて整理されていました。既存の施設を前提にした改修商材が、暑さ対策という一つの動因のもとに集まったかたちです。
そのうえで、輸入実務では順序が効きます。どの面に手を付けるかが決まらないと、機材は決まりません。屋根か、天井か、床か、出入口か。面が決まる前に機材から選ぶと、あとで施工が入らないということが起こります。天井高、梁の位置、床の下地、搬入経路——建物の側の条件が先です。
そして義務の側に戻ると、①報告体制 ②手順の作成 ③関係作業者への周知は、設備を何で揃えても残ります。設備の話と義務の話を同じ列に置かないこと。ここだけは省けません。
お問い合わせは、まとめて弊社がお引き受けします
展示会に出ている企業は、引き合いを待っています。ただ、こちらから一社ずつ当たると、条件が合わない先からも営業の連絡が続きます。数が多いほどその負担は大きく、比較検討どころではなくなります。
弊社は本展の出展内容を全件整理しており、会場では各社に名刺をお渡ししています。「どの面を、どれだけの面積、操業を止められる時間はどれくらいか」をお聞かせいただければ、条件に合う先へ弊社から確認し、回答をまとめてお返しします。お客様の連絡先を、ご了解なく先方にお渡しすることはありません。
弊社がお渡しするのは情報です。特定の一社の代理店や販売権を持つ立場ではなく、同じ課題に対する複数の工法を並べてご案内します。医薬品・化粧品・食品の輸入と流通を手がけている立場から、荷姿や保管条件との噛み合わせも併せてお伝えします。
参考にした一次情報
- 厚生労働省 — 「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案」の概要について(第175回 労働政策審議会安全衛生分科会資料)
- 厚生労働省 — 基発0520第6号(令和7年5月20日)職場における熱中症対策の強化について
本稿は主催者が公表した出展内容および各社公式サイトの公開情報に基づき、傾向を整理したものです。個別の製品名・企業名は挙げておらず、優劣の比較や評価も行っていません。公表内容は2026年8月時点のものです。法令の適用範囲および必要な措置は現場の条件によって異なり、個別の適用可否は所管当局の判断によります。



