第17回 国際物流総合展 2026(LTT2026)出展社シリーズ 第17回
「配車計画を自動で立てます」。展示会でこう言われたとき、返す言葉はだいたい一つです。「その計画の上限は、誰が決めているのですか」
今回は配車・運行管理のソフトウェアの出展です。22社の説明を並べて読むと、前に出てくる言葉はよく似ています。そして似ている部分は、計画の上限を決めている部分ではありません。
LTT2026 の配車・運行管理の出展 — 四つの線引き
| 説明の前に出てくる言葉 | 実際に決めているもの | 名指ししている条文 |
|---|---|---|
| ① 配車計画を最適化します | 計画の上限は大臣の告示が決める | 輸送安全規則 第3条第4項 |
| ② 運送まで手配します | 引き受けられるのは許可を受けた者 | 貨物自動車運送事業法 第3条 |
| ③ 実運送まで可視化します | 可視化は商品機能ではなく法定の作成義務 | 同法 第24条の5 |
| ④ 荷主は発注するだけ | 荷主にも条文がある。勧告は公表される | 同法 第64条・第65条 |
数えると、こうなります。配車・配送計画を前面に出したものが最も多く、全体の3分の2近くでした。次に多かったのが動態管理・位置情報、続いて共同配送・積載率、基幹システムとのAPI連携、AIによる自動立案です。そのあとに労務・拘束時間の管理、バス・旅客の予約、ドライバー不足への対応、安全・点呼、運賃・原価計算が続きました。
運行記録計そのものに触れた説明は、ほとんどありませんでした。計画どおりに走ったかを後から確かめる記録は、そちら側にあります。
① 配車計画の上限は、アルゴリズムではなく告示が決める
「最適化」は計算の話ですが、計算してよい範囲は法令側にあります。貨物自動車運送事業輸送安全規則は、過労運転等の防止として事業者の義務を並べ、その第4項がこう書いています。
「貨物自動車運送事業者は、休憩又は睡眠のための時間及び勤務が終了した後の休息のための時間が十分に確保されるように、国土交通大臣が告示で定める基準に従って、運転者の勤務時間及び乗務時間を定め、当該運転者にこれらを遵守させなければならない。」(貨物自動車運送事業輸送安全規則 第3条第4項)
勤務時間と乗務時間を定めるのは事業者で、その基準は告示です。つまり計画の天井は、ソフトウェアの外にあります。同じ条の第6項は、疾病・疲労・睡眠不足などの理由で安全に業務を遂行できないおそれがある乗務員等を業務に従事させてはならないとも定めています。
運転する側にも別の条文がかかります。道路交通法は「何人も、……過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」(第66条)と定め、さらに使用者について、「その者の業務に関し、自動車の運転者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることを命じ、又は自動車の運転者がこれらの行為をすることを容認してはならない」(第75条第1項)と書いています。列挙された行為には第66条違反が入っています。「命じた」だけでなく「容認した」も書いてある条文です。
② 運送を引き受けられるのは、許可を受けた者だけ
「運送まで手配します」と言われたときに確かめることは一つです。手配するのと引き受けるのは別の立場です。
「一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。」(貨物自動車運送事業法 第3条)
条文はこの一文だけです。同法第2条は、自分で車を使わずに他の事業者の運送を利用する形を「貨物自動車利用運送」として別に定義しており、荷物を運ぶ会社と、運送を手配する会社と、運行を管理するソフトウェアは、それぞれ別の立場です。見積りを並べるときは、相手がどの立場で署名するのかを先に見ておくことになります。
③ 「実運送まで見える」は、商品の機能ではなく法定の義務
可視化は売り文句として並びますが、2024年の改正で作成そのものが義務になりました。元請となる一般貨物自動車運送事業者は、一定重量以上の運送で他の事業者の運送を利用したとき、実運送体制管理簿を作り、「その引き受けた貨物の運送が完了した日から一年間、これを営業所に備え置かなければならない」(同法 第24条の5第1項)。
記載事項には、実運送を行う事業者の商号又は名称、運送する貨物の内容と区間、そして「請負階層(当該貨物自動車運送事業者が実運送を行う貨物の運送に関して締結された運送契約のうち、真荷主との運送契約の後に締結された運送契約の数をいう。)」が入ります。何段階を経たかが、数字で書かれる欄になったということです。
そしてここが荷主にとっていちばん実務的な一文です。「真荷主は、貨物の運送を委託した元請事業者に対して、その業務取扱時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる」(同条第5項)。続く各号は、書面の閲覧又は謄写の請求、電磁的記録の表示したものの閲覧又は謄写の請求です。可視化の画面を買わなくても、荷主には閲覧を求める側の条文があります。
④ 荷主にも条文がある。そして勧告は公表される
配車や運行の管理は運送事業者側の話に見えます。しかし同じ法律に、荷主を名指しした条が二つ並んでいます。
「荷主(次に掲げる者を含む。次条において同じ。)は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない。」(同法 第64条)
注意したいのは括弧の中です。この「荷主」には、「貨物自動車運送事業者が運送契約に基づき運送する貨物を当該貨物自動車運送事業者から受け取る者であって、他人のために当該貨物を受け取るもの」(同条第2号)が含まれます。引き渡す側も同様に第3号で含まれます。自社の荷でなくても、他人のために受け取る立場なら条文の射程に入ります。倉庫や物流子会社を間に置いても外れる話ではありません。
そして次の条が勧告です。国土交通大臣は、事業者への命令や処分をする場合に、「当該違反行為が主として荷主の行為に起因するものであると認められ」、事業者への処分だけでは再発防止が困難と認められるときは、「当該荷主に対しても、当該違反行為の再発の防止を図るため適当な措置を執るべきことを勧告することができる」(同法 第65条第1項)。さらに第3項です。
「国土交通大臣は、第一項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表するものとする。」(同法 第65条第3項)
「するものとする」と書かれています。勧告の前には、荷主が行う事業を所管する大臣の意見を聴く手続(第2項)も置かれています。
線が引かれていない場所もある — 多重委託
請負階層が管理簿の記載事項になった一方で、段階そのものを禁じる条文にはなっていません。同法第23条の4は、元請が他の事業者の運送を利用するとき、「当該貨物の運送について当該他の貨物自動車運送事業者からの二以上の段階にわたる委託を制限するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めます。
「努めなければならない」です。記録する義務と、制限する努力義務は、強さが違います。管理簿で何段階かが分かるようになったことと、その段階が許されないことは別の話で、見積りの比較では段階が何段あるかを自分で読む欄になります。
どの規定がどう適用されるかは、品目・取引の形・契約の立て方によって変わり、個別の案件に当たるかどうかは所管の当局が判断します。
お問い合わせは当社でまとめて承ります
出展社はいずれも問い合わせを待っています。ただ一社ずつ当たると、条件の合わないところからも資料が届き続けます。配車・運行管理の比較項目は多く、多いほど比較そのものが成り立たなくなります。
当社は今回の出展内容を全社分整理しており、会場では各社に名刺をお渡ししています。何を、どこからどこへ、どの頻度で、どの温度帯で運ぶのか、そして自社で車両を持つのか委託するのかをお知らせいただければ、条件の合うところに確認し、回答をまとめてお返しします。お客様の連絡先を同意なく相手方にお渡しすることはありません。
お渡しするのは情報です。当社は特定のソフトウェアの代理ではなく、同じ荷に使える複数の組み立てを並べてご紹介します。なお当社は運送事業者ではありません。運送の引受けは許可を受けた事業者の仕事で、当社は荷主の立場で発注する側です。医薬品・化粧品・食品の輸入と流通を行う立場から、売り文句として書かれた便利さが、運ぶものに付いてくる条文とどう噛み合うのかも併せてご説明します。
参照した一次資料
- e-Gov 法令検索 — 貨物自動車運送事業法(第2条・第3条・第23条の4・第24条の5・第64条・第65条)
- e-Gov 法令検索 — 貨物自動車運送事業輸送安全規則(第3条)
- e-Gov 法令検索 — 道路交通法(第66条・第75条)
本記事の出展に関する記述は、主催者が公表した出展内容および各社公式サイトの公開情報から傾向をまとめたものです。個別の社名は挙げておらず、優劣の比較や評価は行っていません。公表内容は2026年8月時点のものです。法令の適用区分や必要な手続は、取引の形・品目・契約の立て方によって異なり、個別の案件に当たるかどうかは所管の当局が判断します。
