第17回 国際物流総合展 2026(LTT2026)出展者シリーズ 第16回

「うちの港をお使いください」。会場でそう言われたとき、返す言葉は普通ひとつです。「うちの荷物、そこに下ろせますか」。

今回は港・空港・自治体の誘致出展です。18件の案内を読み比べると、前に出ている言葉はよく似ていました。そして似ている部分と、荷物が通るかどうかを決める部分は、重なっていませんでした。

LTT2026 の港湾・空港・自治体誘致の出展 — 四つの線引き

誘致で前に出る言葉実際に決めているもの名前が挙がる条文
① ぜひご利用ください宣伝は港湾管理者の法定業務港湾法 第12条第7号
② どんな貨物でも品目によって下ろせる場所が先に決まる植物防疫法 第6条・家畜伝染病予防法 第38条
③ 保税の置き場があります許可するのは税関長関税法 第42条
④ 補助金があります出すのは自治体、条件は公益上の必要地方自治法 第232条の2

数えるとこうなりました。補助金・インセンティブ・支援制度に触れていたのはちょうど半数。次に多いのが定期航路の案内で、リードタイムや速さ、コンテナターミナルの説明が続きます。そのあとにBCP・代替港としての利用、産業用地・工業団地、空港、カーボンニュートラル、モーダルシフトが並びました。

検疫や通関に触れた案内は、ほとんどありませんでした。荷物が通るかどうかを最初に決めるのはそちらなのに、です。

① 「宣伝すること」は、港の法定業務として書かれている

ポートセールスという言葉は営業活動のように聞こえますが、根拠は法律にあります。港湾法は港湾管理者の業務を14号にわたって列挙しており、その第7号がこれです。

(条文は「港務局は、次の業務を行う」で始まりますが、日本の港の多くは地方公共団体が港湾管理者です。その場合も第34条が「港湾管理者としての地方公共団体の業務に関しては、第十二条及び第十三条の規定を準用する」と定めています。)

「港湾の開発、利用及び保全のため必要な調査研究及び統計資料の作成を行い、並びに当該港湾の利用を宣伝すること。」(港湾法 第12条第7号)

宣伝は仕事として書かれている。だから会場の案内は丁寧で、資料もよく揃っています。同時に、同じ条の14号を最後まで読んでも、通関と検疫は出てきません。港湾管理者そのものが誰かも条文にあり、「港務局又は……地方公共団体」(第2条第1項)です。つまり相手は役所か、役所がつくった団体です。

② 荷物によっては、下ろせる港が先に決まっている

ここが誘致資料に書かれない部分です。品目によっては、輸入できる港・空港が省令で名指しされています。

植物の場合はこうです。「植物、検疫指定物品及び次条第一項に規定する輸入禁止品は、郵便物として輸入する場合を除き、農林水産省令で定める港及び飛行場以外の場所で輸入してはならない。」(植物防疫法 第6条第3項)

動物やその製品も同じ形です。「指定検疫物は、農林水産省令で指定する港又は飛行場以外の場所で輸入してはならない。」(家畜伝染病予防法 第38条)

食品は港の指定ではなく届出の義務です。「販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、その都度厚生労働大臣に届け出なければならない。」(食品衛生法 第27条)。届け出る先は検疫所で、検疫所がどこにあるかは港の努力では動きません。

近い・安い・速いは、下ろせることを前提にした話です。その前提を確かめる欄は、誘致資料の様式に用意されていないことが多い。

③ 保税の置き場は、港ではなく税関長が許す

「保税蔵置場があります」は施設の事実ですが、その地位を与えているのは港ではありません。

「保税蔵置場とは、外国貨物の積卸し若しくは運搬をし、又はこれを置くことができる場所として、政令で定めるところにより、税関長が許可したものをいう。」(関税法 第42条第1項)。許可の期間は10年を超えられず、更新の規定が続きます。

港湾施設そのものを使う指定保税地域は、さらに上です。関税法第37条第1項は、国・地方公共団体や港湾施設を管理する法人が持つ土地や施設のうち「財務大臣が指定したものをいう」と書いています。

そして貨物そのものについては、こう決まっています。「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、……当該貨物の品名並びに数量及び価格……その他必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない。」(関税法 第67条)。条文が名前を挙げているのは税関長で、港ではありません。

④ 補助金を出すのは港ではなく、自治体

半数が触れていた補助金・インセンティブは、港が配っているのではありません。根拠はここです。

「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」(地方自治法 第232条の2)

条文はこれだけです。何がいくら出るかは条文ではなく、自治体が定める交付要綱に書かれています。今回の案内でも、県内に本社・支店・営業所を持つ荷主や事業者に限る、特定の港やターミナルを使った場合に限る、といった条件が添えられていました。「補助金があります」と「御社が対象です」は別の文です。要綱と、予算の年度と、申請の期限を見ないと決まりません。

「代替港」も、平時の話と非常時の話は分かれている

BCPや代替港としての利用を挙げた出展も複数ありました。平時にルートを二本持つことには意味があります。ただし非常時の港は、港湾管理者だけで決まる状態ではなくなります。

港湾法は、非常災害や世界的規模の感染症の流行などが起きたとき、港湾管理者からの要請があり必要と認めるときは、国土交通大臣が「当該港湾管理者の管理する港湾施設の管理の全部又は一部を、期間を定めて、自ら行うことができる」と定めています(第55条の3の3第1項)。平時の優先的な取り扱いを約束できる立場と、非常時に港を動かす立場は、同じではありません。

どの規定がどう適用されるかは品目・取引の形態・施設の持ち方によって変わり、個別の適用可否は所管当局の判断によります。

問い合わせは弊社がまとめてお受けします

誘致の出展は引き合いを待っています。ただ、港を一つずつ当たると、条件の合わない先からも案内が続きます。港の比較は項目が多く、数が増えるほど比較そのものができなくなります。

弊社は今回の出展内容を全件整理しており、会場では各社に名刺をお渡ししています。何を運ぶのか、どこから来てどこへ行くのか、植物・動物由来のものを含むのか、量と頻度をお教えいただければ、条件の合う先に確認し、回答をまとめてお返しします。ご同意なく御社の連絡先を相手方にお渡しすることはありません。

弊社がお渡しするのは情報です。特定の港の代理人ではなく、同じ荷物に対して成り立つ複数の経路を並べてご紹介します。なお弊社は通関業者ではありません。通関そのものは税関長の許可であり、検疫は検疫所・植物防疫所・動物検疫所の所管です。医薬品・化粧品・食品の輸入と流通を手がける立場から、誘致資料に書かれた利便性と、運ぶものにかかる条文との兼ね合いをお伝えします。

参照した一次情報

本記事の出展に関する記述は、主催者が公表した出展内容および各公式サイトの公開情報から傾向を整理したものです。個別の港湾名・空港名・自治体名は挙げておらず、優劣の比較や評価は行っていません。公表内容は2026年8月時点のものです。法令の適用区分や必要な措置は取引の形態・品目・施設の持ち方によって異なり、個別の適用可否は所管当局の判断によります。