第17回 国際物流総合展 2026(LTT2026)出展社シリーズ 第12回
倉庫管理システムを入れる理由は、たいてい「在庫が合わない」から始まります。どこに何がいくつあるか。出したものが本当に出たのか。
合わせるための記録と、法律が求める記録は、同じものではありません。
まず、品目によって求められる記録が違う
同じ「入出荷を記録する」でも、扱うものによって要求の強さも項目も変わります。
医薬品の場合。医薬品医療機器等法施行規則 第158条の4 は、卸売販売業者が医薬品を購入・譲受けしたとき、および販売・授与したときに、次を書面に記載しなければならないと定めています。
| 記載事項 | 備考 |
|---|---|
| 品名 | |
| ロット番号(ロットを構成しないものは製造番号) | 医療用医薬品の場合に限る |
| 使用の期限 | 医療用医薬品の場合に限る |
| 数量 | |
| 購入・譲受け、または販売・授与の年月日 | |
| 購入者等の氏名または名称、住所または所在地、電話番号その他の連絡先 | |
| その内容を確認するために提示を受けた資料 |
さらに同条第3項は、この書面を記載の日から三年間、保存しなければならないとしています。第2項は、常時取引関係にある相手を除き、許可証等の写しその他の資料の提示を受けて住所・連絡先を確認することまで求めます。
食品の場合。食品衛生法 第3条第2項は、食品等事業者は危害の発生の防止に必要な限度において、「販売食品等又はその原材料の販売を行つた者の名称その他必要な情報に関する記録を作成し、これを保存するよう努めなければならない」としています。
読み比べると差がはっきりします。医薬品は「しなければならない」で、項目も保存年数も条文にある。食品は「努めなければならない」で、項目は「必要な情報」とだけ書かれている。同じ倉庫の同じ棚でも、置いてあるものによって記録の性格が変わります。
LTT2026のWMS・WES・WCSの出展 — 四つの合わせ方
| 合わせ方 | 合わせる相手 | 出展の軸 |
|---|---|---|
| ① 置き場所を記録に合わせる | 棚と在庫数 | ロケーション管理と棚卸 |
| ② 出す前に止める | 指示と現物 | 検品と誤出荷の防止 |
| ③ 荷主ごとに分ける | 複数の荷主 | 3PL 向けの多荷主対応 |
| ④ 外のシステムに合わせる | EC・基幹・運送 | 連携とクラウド |
① 置き場所を記録に合わせる——出展内容で最も多い語は「出荷」、次が「在庫」でした。棚の番地を割り当て、そこに何がいくつあるかを常に持つ。棚卸の回数そのものを減らす、という設定の出展が並びます。
② 出す前に止める——「検品」が繰り返し出てきます。バーコードや音声で照合し、指示と違うものを持ってきた時点で止める。誤出荷は出てしまってから気づくと取り返しの工数が大きいので、手前で止めるという置き方です。
③ 荷主ごとに分ける——「荷主」と「3PL」が並んで出てきます。一つの倉庫に複数の荷主の荷があるとき、在庫も請求も荷主ごとに分けて持つ必要があります。倉庫の側ではなく預けている側の単位でデータを割る、という設計です。
④ 外のシステムに合わせる——「連携」と「クラウド」、そして「EC」。受注はモールから、請求は基幹から、送り状は運送会社から来ます。倉庫システムだけで完結しないので、つなぎ方のほうが論点になる、という出展が多くありました。
四つに共通していたこと
四つとも、現物と記録を一致させるための仕組みです。合っていれば数えなくてよく、間違っていれば出す前に止まる。
ただし「合っている」の基準は在庫数です。数が合うことを目的に設計された項目と、法令が求める項目は、重なってはいても同じではありません。
数が合うことと、記録が足りていることは別です
先ほどの条文を、倉庫システムの項目として読み直してみます。
品名と数量と年月日——これはどのシステムも持っています。ロット番号と使用の期限——持っているものと、持っていないものがあります。相手方の住所・電話番号その他の連絡先——これは倉庫のデータではなく取引先マスタの側にあることが多く、しかも「出荷先」と「購入者等」が同じとは限りません。提示を受けた資料——これはそもそも倉庫システムが持つ想定の項目ではありません。
つまり在庫が合っていることは、記録が足りていることを意味しません。前者は倉庫の問題で、後者は品目ごとの法令の問題です。
そして保存年数も別に立ちます。医薬品の購入等の記録は記載の日から三年間。輸入者としての帳簿・書類は、関税法施行令の定めで輸入許可の日の翌日から帳簿七年・書類五年(前回に書きました)。同じ一回の入荷に、起算日も年数も違う保存義務が重なります。
ここは「入れれば記録が残ります」と言う前に、品目ごとに確かめるところです。個別にどの条文がどうかかるかは、取り扱う品目と業の区分によって変わり、最終的には所管当局の判断によります。
お問い合わせは、まとめて弊社がお引き受けします
展示会に出ている企業は、引き合いを待っています。ただ、こちらから一社ずつ当たると、条件が合わない先からも営業の連絡が続きます。数が多いほどその負担は大きく、比較検討どころではなくなります。
弊社は本展の出展内容を全件整理しており、会場では各社に名刺をお渡ししています。「何を、何荷主ぶん、月にどれくらいの出荷件数で」をお聞かせいただければ、条件に合う先へ弊社から確認し、回答をまとめてお返しします。お客様の連絡先を、ご了解なく先方にお渡しすることはありません。
弊社がお渡しするのは情報です。特定の一社の代理店や販売権を持つ立場ではなく、同じ課題に対する複数の方式を並べてご案内します。医薬品・化粧品・食品の輸入と流通を手がけている立場から、品目ごとに変わる記録の要件との噛み合わせも併せてお伝えします。
参考にした一次情報
- e-Gov法令検索 — 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(第158条の4)
- e-Gov法令検索 — 食品衛生法(第3条)
- e-Gov法令検索 — 関税法施行令(第83条)
本稿のうち出展に関する記述は、主催者が公表した出展内容および各社公式サイトの公開情報に基づき、傾向を整理したものです。個別の製品名・企業名は挙げておらず、優劣の比較や評価も行っていません。公表内容は2026年8月時点のものです。法令の適用区分および必要な措置は取り扱う品目・業の区分・工程によって異なり、個別の適用可否は所管当局の判断によります。


